ビビンバは混ぜてから食べる

焼ビビンバというものがブームです。ジュージューに焼けた石の器にビビンバの材料が入っていて、これに特製の味噌みたいなものや、キムチさえも突っ込んで両手に持ったスプーンでかき回す。さっさとかき回さないと、石に触れた部分がこげ過ぎてしまう。やがてナムルや味噌が全体に行きわたり、どこから食べても均一の味となったところでやっと食べ始めることとなる。石焼でないビビンバにおいても、このルールは変わらない。しかし、皆さんそうしていましたか? 我が家では、ビビンバを冷やし中華のように盛り付けて、具がくずれないように、端からきれいに食べる習慣があった。韓国の人は懸命にビビンバをこねくり回す。どうも日本にはこの文化がないような気がしてならない。

レーライスも実はそうなのだ。有名な東銀座の「ナイルレストラン」では、ほとんどのお客が「ムルギーランチ」を注文する。店員がチキンをほぐしてくれたりするけれど問題はその後だ。両手にスプーンとフォークを持って、カレールーとほぐしたチキンとライスを白いところがなくなるまで混ぜろという。混ぜないで食べ始めたりすると、店員がすっ飛んできて混ぜてくれる。カレーライスをそうやって食べていますか? 私はカレーライスにさらにウスターソースをかけて、混ぜてから食べる。なんなら横に乗っている福神漬やらっきょうもいっしょくたに混ぜたりする。

は「納豆がけごはん」のときもそうする。納豆とたれとからしを箸でぐちゃぐちゃにかき混ぜる。これをすごく嫌う人もいる。知り合いのご主人もその一人で、納豆ごはんなのに食べ終わった茶碗がきれいだったりする。これは好き好きなので、なんとも言えないところなのだが、食事の美感覚と味は反比例するような気がしてならない。納豆が大好きな知り合いも、「納豆オムレツ」なるキテレツなメニューを特注しても食べるときに混ぜたりはしないようだ。彼の場合は、これにマヨネーズまでかけるのでこの点で許さないことにしているが。

勧めできない例では、五目ちらし寿司がある。もともと味がついた椎茸やら、レンコンはごはんと混ざっているのだが、その上にはきれいに錦糸玉子やアナゴの細切りや紅生姜が乗っている。これも箸でこねくり回していたら、店のウエイトレスにいやあな顔をされた。